血液型の働きは、気質と体質の両方に関係しています。そして実は、体質的な要素の方が強いのだと思えることがしばしばあります。
たとえばスポーツ選手をみていると、それがよく分かります。野球やゴルフなど、力の反動を利用してボールを打つときなど、前方へと向かう筋肉を使うのはO型です。逆に、力の反動を使って後方に引き寄せるのはA型です。
こうした力の使い方は、筋肉の状態など体質に関係するわけですが、その体質的要素が、気質や行動にも表れてくるのです。
もう数年前のことですが、O型女子(ここてはYちゃん)と2人でB'zのコンサートに行ったことがありました。たまたまチケットが手に入ったとかで、私など、誘われなければ生涯行くことが無かっただろうから、とてもエキサイティングな経験になりました。
会場入口は、すごい行列です。チケットに表示されている席は、"アリーナ席"…?私には何のことかサッパリ分かりません。誘導されるままに進んだところ、だだっ広い野外に送り込まれ、この中で立ち見をするんだということを、やっと理解したのでした。
とにかく、すごい人です。次から次へと、人の波が押し寄せてきて、私たちがちょうど真ん中くらいのところに収まったあたりで、やっと立ち位置が落ち着きました。
隣人たちとの左右前後の隙間なんて10センチもないほどで、完全に人の渦の中に取り込まれてしまいました。しかも真夏の夕方のその熱気と言ったら、始まる前から目まいで倒れそうです。
やがて広い野外に彼らのロックな音楽が鳴り響くと、観衆は一斉にリズムに合わせてジャンプし始めました。人の渦が、上下に、左右に激しく揺れて波打っています。
少しすると、突然Yちゃんがその熱気に立ち眩んだのか、仰向けにバタンと勢いよく倒れてしまいました。しかしYちゃん、わたしが慌てて起こすやいなやスクッと立ち上がり、「大丈夫!」と言って何事も無かったように、再びリズムに合わせてジャンプを始めました。
後ろで唖然としながら心配しているわたしを見て、隣に立っていたお兄さんが「これ舐めとくといいよ」と、飴をくれました。どうやらYちゃん、大丈夫そうです。しかし、何というたくましさだこと。わたしはYちゃんがすっかりこの観衆の渦に同調しているのを眺めながら感心しました。
しかし、もっと驚いたのは、その後のYちゃんの行動でした。彼女は、私より娘ほどの若さではありますが、やはりアリーナ席は初めての経験だと言います。しかも、ついさっき卒倒したというのに、Yちゃんは、揺れながら、ジャンプしながら、どんどん、どんどん、前へ前へと進んで行きます。
私のあの時の気持ちを正直に言えば、むしろ後ろに下がりたかったくらいです。何かあった時には、すぐ出口から逃げられるようにとか、救護隊がすぐ来てくれるようにとか、この衝撃の初体験に、無用心なわたしでも防衛心が働いていたのでしょう。
しかし私は、Yちゃんから離れまいと、観衆の波にもまれながら必死について行くしかありません。
「まだ前に行くの?」
「まだ進むの?」
そしてとうとう、彼女とわたしは、最前列まで到達してしまいました。
Yちゃんは、ふと気づいたように振り返り、わたしに言いました。
「これって、もしかしてO型の性質かしら?」
「間違いないわね」
わたしが同意すると、
「だってせっかく来たんだから、前に行くしかないでしょ!」
と、Yちゃんは意気揚々といいました。
そして私は思いました。もしもA型の女子と一緒に来ていたら、むしろ後ろに下がっていったのではなかろうかと。
燃焼しきったように満足顔のYちゃんを見ながら、わたしはこの日あらためて、O型が前進する人たちであることを、確信したのでした。